川井龍介氏講演会 「NO-NO BOYから考える〜他者との違いを超えて問う、自分は何者か」のお知らせ

プロジェクト5 2016年度 “Critiquing Diversity” 講演会シリーズ 川井龍介氏講演会 「NO-NO BOYから考える〜他者との違いを超えて問う、自分は何者か」のお知らせ

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日時
2016年12月14日(水)19:00-20:30
場所
東京大学駒場キャンパス18号館コラボレーションルーム3
講演者
川井龍介氏(ジャーナリスト、ノンフィクションライター)
使用言語
日本語
備考
入場無料・事前登録不要
主催
東京大学大学院博士課程教育リーディングプログラム「多文化共生・統合人間学プログラム(IHS)」教育プロジェクト5「多文化共生と想像力」

プロジェクト5「多文化共生と想像力」では、12月14日に2016年度"Critiquing Diversity"講演会シリーズの第2回の講演者として、ジャーナリスト、ノンフィクションライターである川井龍介氏をお招きします。様々なジャンルにわたって執筆活動をされるなか、最近では日系アメリカ人2世のジョン・オカダによる『No-No Boy』の新訳を手がけられました。戦後70年を過ぎて、いま一度、戦争を扱った小説を手がかりに、IHSのテーマである多文化共生社会について考える機会になればと考えています。みなさんの積極的なご参加をお待ちしています。

講演主旨

日系アメリカ人2世、ジョン・オカダが残したたった一冊の小説『No-No Boy』は、戦争によって日米という"2つの祖国"に引き裂かれたアイデンティティーの危機というテーマを真正面からとらえている。

日本もアメリカも選ぶこともできなかった若き主人公イチローは、徴兵を拒否して逮捕され刑務所に入る。戦争が終わり出所し故郷のシアトルに戻ったイチローは、国家、人種、世代の"違い"を肌身で感じながら、自分は何者で、どう生きるべきかを自問し、苦悩する。

アメリカをはじめ"違い"に対して、社会に不寛容な空気が感じられるいま、イチローの苦悩とは何かを考え、問い直してみる。あわせて稀有な歴史をたどった幻の名著ともいわれるこの小説の魅力を考える。 

参考

『ノーノー・ボーイ(No-No Boy)』は、1957年、東京とアメリカに拠点をもつチャールズ・イー・タトル出版から出された。当時の発行部数は1500部で増刷されることはなかった。オカダはその後次作にとりかかっていたようだが1971年、47歳のとき心臓発作で亡くなった。このままであれば作品も著者も忘れ去られてしまうところだった。ところが5年後の1976年、この本を"発見"し、衝撃を受けたアジア系アメリカ人の若者たちの手により「ノーノー・ボーイ」は復刊される。これをシアトルにあるワシントン大学出版が引き受け、以後少しずつ版を重ねアメリカを中心に読み継がれ、累計で15万部に達している。一昨年には38年ぶりに新たな序文を加えて新版が出された。 

日本では1979年に英米文学研究者の中山容氏の訳で晶文社から出版された。この本に魅入られて訳したという中山氏はボブ・ディランの全詩訳(片桐ユズル氏との共訳)などを残している。日本語版も少しずつ版を重ねたが、2002年に増刷されたのを最後にやがて品切れ状態となり、近年では一部の図書館などでしか読むことはできなくなった。

古書店で偶然本書(日本語版)を手にしたのがきっかけでこの小説と著者の世界を長年取材していた訳者が、今回の新訳(旬報社刊)を企画、39年ぶりの全面改訂で復刊されることになった。

※注意

  • プログラム生には、参加後、報告書を提出していただきます。
  • 写真・映像・音声等を記録することとその記録されたものをプログラム活動で使用する可能性があることをご了承いただいた上でご参加ください。