公益財団法人 放射線影響研究所(RERF)事前視察報告 渡邊 雄一郎

公益財団法人 放射線影響研究所(RERF)事前視察報告 渡邊 雄一郎

日時
2014年6月4日(水)-5日(木)
場所
公益財団法人 放射線影響研究所(RERF)広島県広島市
参加者
渡邊雄一郎

本リーディングプログラムで、「科学技術と共生社会」に関する実習をおこなうなかで、放射線関係のトピック、福島の問題を扱うことになる。ただ単に現状を見るにとどまるのではなく、学術的に考え、社会への発信を考える場として、広島市にある公益財団法人 放射線影響研究所(RERF)を想定した.今後のプログラムのなかで、現場見学、研修受け入れの可能性について相談させていただいた。結果、先方でポジティブに検討をしていただくこととなった。 本出張での視察は、共同研究で来日中であったEge University(トルコ)のSebnem Kavakli博士、および渡邊の研究室所属の修士一年重政理紗とともに行った。Kavakli博士には海外からみたRERF、重政さんには大学院生からみたRERFの活動、研究,そして見学の意義についての評価をしてもらった。

・6月4日(水)

 翌日朝にRERF訪問予定となったために広島市に前泊。

・6月5日(木)

 渡邊は今回,平和記念資料館(写真:早朝のため、開館前)を見学する時間はなかったが、市内には原爆ドームと合わせて、関連して見学する価値のあるスポットがある。今回Kavakli氏、重政の二人が、同資料館を初めて訪問をしたが、展示が充実していること、日本語英語ともに非常に説明がしっかりとなされていることを感想としてあげていた。最初から最後まで読んで,時間が足りなくなる程であったとのべている。学生にとって、様々なことを知ることができる資料館は行く価値があるであろう。

 爆心地(じっさいには原爆ドームから1ブロックはいったところ)、原爆ドーム周辺を歩くことは、思索する場として価値はあることを,早朝の散歩で感じた。ちなみに、放射線量は(簡便な測定装置であり誤差は大きい)、0.07uSv/時を計測。東京よりは少し高いが,通常の範囲であった。これは一般に東日本がひくく、西日本が少し高いという傾向の範囲内である。

 爆心地から500 m近辺(白神社(しらかみしゃ)近辺)に、被ばくしたにもかかわらず,その根本から復活した樹木が何本も存在していた。研究対象としての価値もあることを感じた。

 6月5日午前9時の約束で 公益財団法人 放射線影響研究所(RERF)を訪問した(上写真:玄関前)。 当研究所の活動内容について解説を受けながら,見学し、広島の原爆被曝者,家族の健康調査などをつみ重ねてきた実績と、明らかとしてきた事実についてうかがうことができた。昭和20年直後からアメリカ主体に始まったABCCという調査母体が前身で、現在では本RERFは日本の 厚労省と米国との共同研究機関となっている。戦争の傷跡をのりこえ、人体への影響ということについて,研究を重ね、そして 社会への情報還元につとめている実績を知ることができた。
 最初の対応は、事務局広報出版室室長補佐の内藤洋氏、実際の案内は,同室長のジェフリー・ハート氏にしていただいた。ハート氏は日本語英語両方で対応できるかたで、多元的な議論ができる素晴らしい方であった。敵対国であったという構図、人間を対象とした場合の研究のむずかしさなど生の声を聞くことができ、科学的な局面をこえた、人間社会における科学というものを体感できた。
 広報出版室の連絡先: 082−261−3131

 RERFで公表された数値などが基盤となって,福島第一原発事故以降の被ばくと発がんリスクの関係について議論されている。放射線と人体への影響を現場で知ることができる場であった。
 当研究所の広報活動、公開活動にプログラム生が参加する可能性,研究活動の一部に研修活動として参画する可能性について、事務局総務課課長補佐の天満恵一氏に検討をしていただくことになった。
 尚プログラム生の参加する研修は冬学期に予定されている。

報告日:2014年6月12日