浦河べてるの家 ウインタースクール 報告 石原 孝二

浦河べてるの家 ウインタースクール 報告 石原 孝二

日時
2014年2月17日(月)−21日(金)
場所
社会福祉法人浦河べてるの家
主催
東京大学大学院博士課程教育リーディングプログラム多文化共生・統合人間学プログラム(IHS)「科学技術と共生社会」教育プロジェクト
協力
社会福祉法人浦河べてるの家

本ウインタースクールは、精神障害をもつ当事者と支援者のコミュニティである浦河べてるの家の一週間の活動(当事者研究、ミーティング、軽作業など)に大学院生が参加し、自らの専門分野に関連する話題を提供することを通じて、当事者がかかえる問題に自身の研究がどのように寄与しうるのかを、当事者とともに考えることを目的として開催されたものである。IHSウェブサイトで院生の参加者をつのり、院生11名が参加した。

浦河べてるの家とは、これまでもUTCPによる活動を通じて協力関係にあり、今回のスクールは、これまでの協力関係を踏まえて企画・実施されたものである。スクールでは、教員(石浦教授)の講演とべてるの家関係者による講演、院生による発表が行われたが、浦河べてるの家の普段の様子を知ることも大きな目的としていたため、通常の予定を大きく崩さずに、講演や発表をその中に挟み込んでいくことに留意した。

 スクールに関しては、院生参加者全員にレポートの提出を求めている。また、べてる側の参加者に対しても、数人に対してインタビューを行った。院生のレポートやべてる側の参加者の感想などをまとめた詳細な報告は別途作成する予定であるが、べてる側の参加者からは概ね好評を得ており、来年度もぜひ実施して欲しいとの声が多く聞かれた。

 講演、発表の詳細は以下の通りである。

  • 講演(2月17日13時30分〜15時30分)
    石浦章一(東京大学大学院総合文化研究科教授・副研究科長/教養学部副学部長)「脳と心の遺伝学」
    向谷地生良(北海道医療大学教授)「べてるの家の30年」
    佐々木実(社会福祉法人浦河べてるの家理事長)「べてるの家とともに歩む」
    小林茂(社会福祉法人浦河べてるの家)「べてるの家とコミュニティ支援」

    東京大学学生(大学院生)による発表
    哲学、神経科学(脳科学)、認知科学、社会学、教育学などを専門とする大学院生が自分の専門を精神障害に関する問題に結びつけ、分かりやすく発表する。(発表15分+質疑応答10分)

  • 2月17日 15:30〜17:30
    「催眠術と幻覚」漆原正貴(認知科学)
    「幻覚のメカニズム」金本麻里(異常心理学)
    「躁状態の多幸感は本当の幸せ?」谷内洋介(現象学・精神医学の哲学)
    「アフリカにおける精神保健の現状と課題」野上活(比較教育学・国際教育開発)

  • 2月18日 9:30〜11:30
    「ホルモンと心」池田宗樹(神経科学・神経内分泌学)
    「老いの脳科学」大嶋絵理奈(分子生物学)
    「IT創薬とオーダーメイド医療」水野雄太(理論化学・計算化学)
    「強い規範性(拘束性)を持つ知識とむきあう戦略」津田菜摘(医療社会学)

  • 2月20日 16:00〜17:30
    「『幸福』の脳科学」杉浦綾香(神経科学)
    「他人に対する恐怖の哲学:J. P. サルトルと「私」の傷つきやすさ」栗脇永翔(実存主義・精神医学の思想史・表象文化論)
    「家族研究にとって当事者研究はどのような意義をもつのか」高崎麻菜(精神医学の哲学)
    ■企画・引率責任者:石原孝二(東京大学大学院総合文化研究科准教授)

このほかに、16日から21日まで、毎日午前に開催されたミーティング、SST、当事者研究に参加し、午後は施設見学や交流会などを行った。


べてるの家理事の向谷地生良さんとの座談会/2月19日

報告日:2014年3月3日