The 2nd East Asian Conference for Young Sociologists報告 打越 文弥

The 2nd East Asian Conference for Young Sociologists報告 打越 文弥

日時
2016年2月1日(月)〜2日(火)
場所
東洋文化研究所3階大会議室及び第一会議室
主催
東京大学大学院博士課程教育リーディングプログラム「多文化共生・統合人間学プログラム(IHS)」教育プロジェクト4「多文化共生社会をプロデュースする」

以下では、東洋文化研究所で開催されたThe 2nd East Asian Conference for Young Sociologistsの参加報告についてまとめている。このカンファレンスに、私は参加者という立場だけではなく、実験演習Academic managementを履修しており、学生オーガナイザーとしても携わっていた。今回は、参加者としての報告だけではなく、運営側から見たカンファレンスの報告の側面も含まれることにご留意いただきたい。

参加者としては、他の報告者と同様に、締め切り日までにアブスト及びスライドを提出し、会議にて報告した。私の所属した部会は東アジアのジェンダーと不平等に関するもので、学歴同類婚と不平等の関係を日韓で比較した私の研究報告以外に、台湾と韓国の企業規模別に見た男女の賃金格差に関する報告、日中韓台の四カ国における家事労働の研究の二つがあった。チェアや会場の先生方、また報告者から報告への質問をいただき、今後の修論の方向性が定まるとともに、将来的な研究の可能性についても示唆があった。ほかの参加者についても、レセプションや報告の合間にも交流することができ、こうした国際カンファレンスを通じて今後も連携を深めていくことの重要性を改めて感じるに至った。

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次にオーガナイザーとしての側面について触れたい。私が担当したのは、主に参加者からアブストを受け取り、それを踏まえて会議の構成を考え、プロシーディングスの原稿を作成するものだった。当日は、朝に海外からの参加者の泊まっているホテルにいって会場まで案内をすることから始まった。会議を運営する側に立ってわかることは、こちらの予想したように参加者が動かない時の対応の難しさであった。小さなレベルでは、タイトルの修正や、会場に着くのが遅れるといったものがあるが、大きなものになると、ホテルの宿泊先をより安価なところに変更している例もあった。そういったイレギュラーな行動に対しても想定の範囲内として会議を運営する必要を感じた。

会議の運営を通じて感じた、幾つかの課題と改善点について述べたい。第一に、会議の方向性について、今後より明確にする必要がある。今回の会議は東アジアの若手社会学研究者を集めた研究報告という趣旨であったが、それだけでは実に多様な種類の報告を目にすることになる。運営側として部会の構成に携わったが、タイトルとアブストラクトだけで3-4の報告を一つの部会にまとめる作業は容易ではなく、作成過程で内容を修正してきた学生もいたので、リスクをともなう作業であった。東アジアの研究者で集まるということで、国際比較の視点を踏まえた研究が推奨されたが、私の報告を含め必ずしも国際比較が専門ではない若手研究者がフィールドとする国とほかの国を比較した場合に、どうしても対象とする社会に対する知識に差が生じてしまう。今回の会議を若手研究者の育成と考えるのであれば、今後は単なる研究報告だけに終わるのではなく、ラウンドテーブルのように、より少人数の形で一人の報告者の研究に対してほかの国の研究者からより丁寧なコメントをもらう形式にする可能性も考えられる。

第二に、私が延世大学の学生から受けた質問から、今回の会議に際しての課題について述べたい。その学生は、私が所属する社会学研究室の教員もこの会議に参加するものと考えていたようである。今回の会議はIHSプログラムの主催ではあるが、社会学者による会議という性格上、東大に所属する社会学研究者がもう少し参加しても良かったのではないかと考えている。今回、延世大学からの参加者には、強い国際志向ともいうべき考えが見て取れた。英語によるコミュニケーションにも長けている彼らは、こうした国際的なカンファレンスに対して非常に積極的である印象を受けた。教授陣にアメリカで学位を取っている先生が多いという事情も関係してくると考えられるが、今後、日本の研究者もこうした国際カンファレンスに積極的に参加するようになれば、国際比較研究の可能性も広がっていくのだろうと感じた。

私自身が国際会議の運営が初めてだったという事情もあり、何をすれば良いのかわからない状況から、なんとか会議を終えることができた。課題を挙げればきりがないが、こうした会議の運営を修士課程のうちに経験できたことは、今後の進路に大きな意味を持ってくると考えている。このような機会をいただけたことに感謝し、来年は再び参加者としてこの会議で報告することができれば幸いである。

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報告日:2016年2月10日