Methodological Seminar for Cultural Diversity (2)
Diversity Management in Japan and Germany: A Methodological Inquiry 報告 楠本 敏之

Methodological Seminar for Cultural Diversity (2)
Diversity Management in Japan and Germany: A Methodological Inquiry 報告
楠本 敏之

日時:
2014年12月12日(金)16:30−18:30
場所:
東京大学本郷キャンパス東洋文化研究所3階大会議室
講演者:
Professor Fabian J. Froese (Georg-August-University Goettingen)
主催:
東京大学大学院博士課程教育リーディングプログラム「多文化共生・統合人間学プログラム(IHS)」「移動・境界」ユニット

本講演は、ゲッティンゲン大学のFabian J. Froese先生による、日本とドイツにおけるダイバーシティ・マネジメントの現状の比較及びその方法論的問題を示すものであった。

ダイバーシティ・マネジメントは、グローバリゼーションや人口減少等の現代の問題に対応して、それまで労働力として十分に活用されていなかった人々を活用していこうとする試みである。もちろん、ダイバーシティ・マネジメントは、単に経済的要求に資するだけのものではない。労働力として十分に活用されていなかった人々が属する人種、国籍、性別、年齢、文化などのカテゴリーに関する差別等の問題への対応するものでもある。様々な差異に基づき排除・抑圧するのではなく、その中での共存を模索することが課題となっているといえる。

本講演においては、このような共存の模索の日独比較がテーマとされており、ドイツの企業のダイバーシティに対する取り組みが、日本との比較を念頭に置きながらも、中心的に議論された。その中で私にとって最も興味深かったのは、ドイツにおいては、ジェンダー、年齢、文化等の幅広い事項がダイバーシティにおける重要な課題として意識され、取り組まれていることであった。日本においては、これと対照的に、ジェンダー以外の面での取り組みが全くと言っていい程なされていない。この点に関し、とりわけ示唆的なのが、年齢と人種・国籍に関する対応である。ドイツにおいては、全ての年齢、人種・国籍の人達の力を生かす方向でマネジメントが行われているのに対し、日本においては、高齢者は年金受給開始年齢の引き上げに応じる形で定年の引き上げ等の施策が行われているに過ぎず、その力を活用するというより、やむを得ずマネジメントしているだけであるし、外国人労働者についても、日本の都合に応じた補充労働力としか考えられておらず、他者としての敬意はないというのが現状である。本講演を聴くにつれ、少なくともダイバーシティ・マネジメントへの取り組みに関しては、総体的に日本はまだまだ浅薄であり、より実質的な共生への努力が必要であると痛感させられた。

本講演においては、研究の方法論的側面についても、定量的方法と定性的方法の双方を活用する具体的方法への言及があるなど、聴講者として非常にスリリングな知的興奮を感じることができた。これまで、ダイバーシティ・マネジメントには関心をもちながらも、具体的に触れることはなかったが、多文化共生追求の一つのあり方として、有効かつ有益であることがわかり、私にとっては、非常に有意義な講演であったといえる。

Methodological Seminar for Cultural Diversity (2) Diversity Management in Japan and Germany: A Methodological Inquiry 報告 楠本 敏之

報告日:2014年12月12日