2016年度つくばみらい市農業実習報告 前野 清太朗

2016年度つくばみらい市農業実習報告 前野 清太朗

日時
2016年6月25日(土)9:35 - 15:00
場所
茨城県つくばみらい市寺畑およびその周辺
主催
東京大学大学院博士課程教育リーディングプログラム「多文化共生・統合人間学プログラム(IHS)」教育プロジェクト2「共生のプラクシス──市民社会と地域という思想」
協力
NPO法人「古瀬と自然の文化を守る会」
東京大学大学院農学生命科学研究科

6月25日、報告者はIHSプロジェクト2ならびにNPO法人「古瀬と自然の文化を守る会」(以下、古瀬の会)、東京大学大学院農学生命科学研究科(以下、農学生命科学研究科)が共同実施する農業実習へ参加した。報告者が当地での農業実習へ参加するのは、IHS参加前の修士課程在学中より数えて6回めになる。

午前9時半、参加者11名は関東鉄道小絹駅へ集合した。IHSからは村松真理子准教授、石川学特任助教および報告者(前野)が参加し、農学生命科学研究科からは井上真教授と同研究科の学生7名が参加した。この日は梅雨の最中ゆえ天候が不安定であり、予定していた水田での草取り作業を変更し、古瀬の会が管理する古民家「松本邸」周辺での作業となった。

松本邸のある筒戸は小絹駅を国道294号線にそって南下した場所に位置する集落で、ふだんの実習先である寺畑集落とは小絹駅をはさんで南北に位置している。古瀬の会メンバーの方々の出迎えを受けた一同は車に分乗して目的地へ赴いた。築150年の松本邸主家はいわゆる四間取りの古い農家様式を残しながら、重厚な和風テーブルやガラス戸の表玄関といった近代的要素を備えた古民家である。家屋が敷地とともにつくばみらい市へ寄贈され、市の補助をうけながら古瀬の会によって管理がなされている。現在、古瀬の会主導で主屋屋根の茅葺き復元作業が進められており、過去にはIHSプログラム生と農学生命科学研究科も実習の一環として葺き替え作業へ参加している。

松本邸は常時外部開放されてはいないが、数日後に地元の同窓会で利用予定との由で、午前中は屋内清掃と周囲の草刈りを行った。事務局長の小菅氏は寺畑集落出身の古瀬の会最古参メンバーであり、本職の造園業に従事しつつ、農作業と都市との交流事業につとめている。聞けば当日の朝も(造園)現場から戻ったところといい、小菅氏の汗のにじむシャツをみながら氏のパワフルな活動へ頭が下がった。普段開放されていないだけあって、家屋内にはうっすら埃がつもっていた。さしあたり畳の乾拭きからかかって、仕切戸・障子戸を外し埃をはらうなど、外回りの草取りに並行して掃除に取り組むこと1時間半余、正午までに各室の大まかな埃取りが終わった。昼食は掃除を終えた座敷で、古瀬の会メンバーの皆さんと一緒に頂いた。仏壇の前に一座設けて食事をとる様が、なんとはなしに報告者の故郷で、老壮若が打ち揃って祝い事をする様を思い出させた。多分に報告者個人の感傷の混じったイメージだが、参加者それぞれの背景によって、おそらく見え方も異なったことだろう。

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午後、若干天候が好転してきたことから、報告者含む参加者の一部は隣接する畑での雑草取り作業に移った。畑は住宅とともにつくばみらい市へ寄贈されたもので、サツマイモとトウモロコシが植えられている。農業体験のため、近隣の小学校や養護学校、あるいは古瀬の会と連携した「葛飾区郷土と天文の博物館」の農業体験活動に使用されている。梅雨時とあって雨後の湿った圃場に小さな双葉がたくさん芽を出している。まだ見た目は可愛らしいものだが、数日とたたぬうちに丈を伸ばしてサツマイモの苗を覆ってしまうであろうから、畝をかいて土をかぶせていくことにした。重作業ともいえぬ作業といえ、都心暮らしに馴染み鍬も持ちつけぬ報告者には、いくぶん腰へと負担がかかり、一畝をやり終えると汗がとめどなく流れてきた。

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15時、畑での作業を終え、屋内清掃グループともども再度車で駅まで送っていただいた。帰路、この春の農業実習で植えた田んぼアートの生育具合を見せていただいた。寺畑・筒戸などつくばみらい市南部の一帯は昨年(2015年)夏の茨城豪雨で大きな浸水被害を受けた。圃場・用水路ともどもかなりの被害と聞いていた(その当時、報告者は台湾でのフィールド調査中で、何も助力できぬ悲しさを強く覚えたものである)。今回、寺畑の水田の様子を見ることはできなかったものの、健やかに伸びる田んぼアートの稲に、住民の皆さんの復旧努力の成果がうかがわれた。

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報告日:2016年7月7日