プログラム生自主企画「捕鯨・資源管理のこれまでとこれから 小型鯨類沿岸捕鯨の現場を知る」報告 浅井 悠

プログラム生自主企画「捕鯨・資源管理のこれまでとこれから 小型鯨類沿岸捕鯨の現場を知る」報告 浅井 悠

期間
2015年度
場所
千葉県南房総市和田浦、東京大学駒場キャンパス
共同企画者(順不同)
浅井悠、小野すみれ、前野清太朗
主催
東京大学大学院博士課程教育リーディングプログラム「多文化共生・統合人間学プログラム(IHS)」教育プロジェクト2「共生のプラクシス──市民社会と地域という思想」

企画の趣旨

我々は、昨年度末提出した報告書の通り、昨年度冬学期において「捕鯨・資源管理のこれまでとこれから 小型鯨類沿岸捕鯨の現場を知る」と題し、捕鯨に関する論争の実相を把握すべく、いくつかの勉強会を実施してきた。昨年度の活動の具体例としては、反捕鯨派の主張を知るための映画「ザ・コーヴ」上映会、捕鯨に関する文化史についての見識を深めるための葉山茂氏による講演会、捕鯨をめぐる国際的法規制の現状を知るための国際法に関する勉強会、欧米諸国における捕鯨の歴史を知るための映画「白鯨」上映会を行った。

資源管理をめぐって我が国が抱える国際的問題は、鯨類のみならず、マグロやウナギなど多様であるが、多文化共生という観点からは、次のような理由から、捕鯨問題が最も論争的であると言える。すなわち、「共生のプラクシス」の問題意識との関連においては、人間を主体とした「資源管理」の一方で、動物にも「人権」の主体としての地位を認めようとする「動物の権利論」や、動物を快楽と苦痛の主体として幸福計算の中に組み込むべきであると主張する「動物解放論」の存在から、捕鯨問題を「人権」問題としてとらえることが可能である。さらに、捕鯨は、鯨類という水産資源を供給することで生計を立てている「地方」がある一方で、「都市」においては必ずしも鯨食が文化として根付いておらず、需要が低下しており「都市と地方」の断絶を浮かび上がらせるという側面をも併せ持っている。また、生物資源である鯨類の保存管理を巡り、法的、倫理的、文化的な論争が起きていることを考慮すれば、これに対する学際的アプローチは必須である。

今年度は、上記目的を達するため、昨年度の活動で得た知見を踏まえ実際の現場を知るべく、千葉県南房総市の和田漁港を拠点とした農林水産大臣認可事業である小型捕鯨業に関するフィールドワークを中心とした活動を実施した。具体的には、2015年7月4日から2日間にわたって和田漁港周辺において、外房捕鯨株式会社ほかによって実施される「第7回和田浦くじらゼミ」への参加、同年8月17日から18日にかけての和田浦でのツチクジラ解体の見学の各研修を実施し、2016年1月25日にはくじらゼミ及び解体見学を実施する外房捕鯨株式会社の庄司義則社長を本学に招聘しての講演会を開催した。

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報告日:2016年3月30日