駒場博物館特別展『境界を引く⇔越える』関連イベント
サイエンス・トーク・参加報告 石井 智子

駒場博物館特別展『境界を引く⇔越える』関連イベント
サイエンス・トーク・参加報告
石井 智子

日時:
2015年6月20日(土)14:00−16:30
場所:
東京大学駒場博物館
講演者:
石浦章一(総合文化研究科 教授)
椢原朋子(総合文化研究科 修士課程2年)
石井智子(総合文化研究科 修士課程2年)
主催:
東京大学大学院博士課程教育リーディングプログラム「多文化共生・統合人間学プログラム(IHS)」教育プロジェクト3「科学技術と共生社会」

駒場博物館特別展『境界を引く⇔越える』の関連イベントとして、石浦章一教授、椢原朋子氏、石井智子によるサイエンス・トークが行われた。石浦教授は「遺伝子は見えるか?」、椢原氏は「タンパク質は小さな精密機械?〜私たちを支える働き者の正体〜」、石井は「ノンコーディングRNA〜ゲノムに無駄はあるのか〜」というテーマでそれぞれ講演を行った。3人の講演はそれぞれ生体内で重要な物質であるDNA、RNA、タンパク質を網羅した内容となった。石浦教授は遺伝について、また近年話題になっている遺伝子診断について話された。遺伝子診断の情報は自分だけのものではなく、家族で共有するものであること、また遺伝子診断の中には信憑性がきわめて低いものが存在することが指摘された。椢原氏はタンパク質の構造変化やダイナミクス、自身のHIVの新薬開発研究について話された。石井はノンコーディングRNAとは何か、またその医療への応用について話した。今回のサイエンス・トークを通じて、科学に携わる者として、科学リテラシーや疑似科学に関する問題を真剣に考え、一般の方に科学の正しい情報を、理解しやすいかたちで伝えるために積極的に行動する必要性を感じた。また、医療と密接に関わる生命科学の研究を行う上では、科学的側面だけでなく、医療体制や研究対象の疾患が世間でどのように受け取られているかなど、社会的側面からの視点も重要であると思った。東日本大震災に伴う原子力発電所の事故やSTAP細胞問題により、昨今科学コミュニケーションの重要性が叫ばれている。また先日、文部科学省が全国の国立大学に対して教員養成や人文社会科学系の学部、大学院の廃止や転換を要請する通知を出し、大学教育が大きく変わる可能性が生じている。科学コミュニケーションおよび科学教育、科学研究をどのように行っていくべきかを科学者だけでなく社会全体で考える必要性があり、そのためには科学者と一般の方との相互コミュニケーションが大変重要であると感じた。

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報告日:2015年6月20日