The 1st East Asian Conference for Young Sociologists 報告 山田 理絵、小泉 佑介

The 1st East Asian Conference for Young Sociologists 報告 山田 理絵、小泉 佑介

日時:
2015年2月2日〜3日
場所:
韓国延世大学

2015年2月2日・3日に、韓国の延世大学においてThe 1st East Asian Conference for Young Sociologistsが開催された。この国際会議は、延世大学、台湾大学、東北大学、北海道大学、台湾アカデミア・シニカと、東京大学IHSプログラムによって合同で開催された企画であった。東京大学からは、オーガナイザーとして園田茂人先生が、プレゼンテーターとしてIHSプログラム生である山田理絵、小泉佑介、Lige Baoの3名が参加した。この国際会議では、各大学の社会学を専門とする若手研究者が集い、テーマごとに10のセッションが組まれ、それぞれ4名程度の発表が行われるものであった。テーマは「教育、不平等と社会化」、「健康と社会」、「グローバル化と国家」、「文化と宗教Ⅰ・Ⅱ」、「ジェンダーと移動Ⅰ・Ⅱ」、「社会ネットワークと組織」、「組織と社会政策」、「社会福祉」といったように、多岐にわたるものであった。

The 1st East Asian Conference for Young Sociologists 報告 山田理絵・小泉佑介

山田は、「健康と社会」のセッションで発表を行った。報告内容は、運命論、精神医療、体重管理、ハンセン病のトピックに関するものであった。セッションの最後にアカデミア・シニカのMichael Hsiao先生から、医療に関する事象を社会学的な理論・概念を用いて論じる際に、医学をどこまで知るべきか、どこまで知ることができるのかという点について、絶えず意識しなければならないという指摘をいただいた。報告者は医学を専門に学んだ経験はない。したがって、仮に医学的な知識を網羅することが可能だとしても、医療者の視点から医学を理解したり経験したりすることは不可能である。先の問いかけに対しては、むしろこの前提のもと、可能な限り多くの医学的知識は吸収すべきであるし、一方でそれは非医療者の視点からの理解であるという点で限界があると、暫定的に考えている。Hsiao先生のご指摘は、医療や疾患を人文学・社会科学から理解しようとする時に、真摯に考え続け実践しなければならない点である。

The 1st East Asian Conference for Young Sociologists 報告 山田理絵・小泉佑介

一方、小泉は「組織と社会政策」のセッションで、インドネシアにおける農村社会の変容について、スマトラ島における小農のアブラヤシ栽培がどのように拡大しているのかという内容の報告をおこなった。人文地理学を専門とする報告者は、これまで社会学が分析対象としてきた農村社会の問題に対して、GISを用いた空間的な分析を試み、その結果を提示した。質疑応答では、インドネシアにおけるアブラヤシ栽培の意義といった大きな観点から、小農による栽培と企業による栽培の連関性、小農の収穫物を買い取る搾油工場の位置づけなど、多様な質問が出た。また、セッションコーディネータのJoon Han先生からは、パームオイルが国際市場で取引されている商品であることを考えると、市場価格と小農の対応をもう少し詳しく考えた方が良いという指摘を受けた。さらに、北海道大学の櫻井義秀先生からは、地理学的観点を深めるならば、小農の生業の変遷などにも着目すべきだというコメントを頂いた。

今回の報告では、これまで日本の学会等で発表してきた際に受けたコメントや質問などと比べ、新たな発見が多かった。また、他の学生の発表を聞く中で、大枠の社会学理論や調査結果の抽象化といったレベルでの議論につなげていかなければならないと感じた。英語で他国の学生と交流する際のコミュニケーションスキルを磨くことも、今後の大きな課題として見えてきた。

本国際会議の閉会式では、「6つの大学から教員と学生が集まることの意義は何か」ということが、いま一度参加者に問いかけられた。East Asian Conference for Young Sociologistsという場が、研究内容を報告しコメントや疑問を交わすことのみを目的とするならば、それは研究の質を向上させるうえで意義があることは疑いない。一方で、そのことだけが目的ならば、その場が本研究会である必然性はないだろう。本国際会議の意義を色濃くしていくためには、「同じ時代に同じ東アジアに生きる人々が集い、社会学や近接領域の方法論を用いて問題を提起し、分析し、議論を交わすこと」の意味を考えて参加することが求められる。園田先生からは、参加者が「異なる国家」からというよりも「異なる地域」から参加する姿勢が必要ではないかという指摘があった。

総じて、今回の国際会議では、日本・韓国・台湾の若手研究者が集い、それぞれの研究内容を報告しあった上で、多様な議論が展開されたこと、そして、各国の学生が相互に様々な意見を交換できた場として、とても有意義なものであった。他方で、本国際会議の趣旨が「社会学を専攻する若手研究者の集い」といった、少し抽象的な枠組みとして設定されていたため、各々の報告がそこまで連関していないような場面もあった。会議全体の方向性をより具体化することが一つの課題として考えられた。本会議の来年度の開催場所が東京大学に決定したため、そういった課題を踏まえ今後も本会議の発展に寄与していければと思う。

報告日:2015年2月13日