多文化共生・統合人間学演習IX(第4回)報告 信岡 悠

多文化共生・統合人間学演習IX(第4回)報告 信岡 悠

日時:
2014年11月28日(金)14:50−16:20
場所:
東京大学駒場キャンパス8号館205教室
報告者:
村松真理子、信岡悠、前野清太朗、山﨑彩
主催:
東京大学大学院博士課程教育リーディングプログラム「多文化共生・統合人間学プログラム(IHS)」教育プロジェクト2「共生のプラクシス――市民社会と地域という思想」

今回の演習は、2014年10月24日から10月30日にかけて、多文化共生・統合人間学実験実習IIの一環として行われた、イタリア研修「食・地域・市民社会――スローフードと多様性」の報告会であった。報告者は村松真理子准教授、山﨑彩特任研究員、実習に参加した学生2名であった。各々が、実習中に撮影された写真や映像、現地にて入手した資料を題材に、プレゼンテーションソフトを用いて報告を行った。以下、当日の模様、印象に残った点について述べる。

各報告者はそれぞれの希望で、研修中の出来事をいくつか選んで発表した。そのため時系列は整っていないものの、各人の専門分野や見解に基づいて報告がなされていたため、視点の違いが浮き彫りになっており興味深く感じられた。特に、ピエモンテ州は数十年かけて食の教育を実施しており、食について考える場を最大限に提供してきた、という観点は、報告者自身は言語化できていなかったため、新鮮だった。食の科学大学という学術機関が設立されたのは勿論のこと、地元の小学校、レストラン、生産者を含む地域の人々が一体となって、食への理解を深めようと努めているのであった。

多文化共生・統合人間学演習IX(第4回)報告 信岡 悠
多文化共生・統合人間学演習IX(第4回)報告 信岡 悠

スローフードは、地域の中で守られてきた味、環境への配慮、生産者に対する公正な評価という条件を満たす食のことを指す。美食とも関係が深いためか、一見すると楽しさや親しみやすさばかりが強調されているように思われる。しかし本報告会によって、スローフードの根底にある強い問題意識、例えば種の多様性の減少、生産者と消費者のかい離への危惧などを改めて認識できた。勿論、理念を世界各地に広げていくために、また活動者の関心を継続させていくために、楽しさや親しみやすさは重要である。しかし同時に、市民運動としてのスローフードが伝えている言葉や、問題意識を見過ごしてはならないだろう。

また、報告会の出席者は研修に参加していない方が多数だったため、何をどのように、わかりやすく伝えるべきか考えるよい機会になったと思われる。IHSでは様々な研修や実習が行われているが、一定期間を置いた後にあらためて振り返り、体験を人に語ることで、以前は気付かなかった点を認識できるとわかったのは、ひとつの収穫であった。

多文化共生・統合人間学演習IX(第4回)報告 信岡 悠

報告日:2014年11月29日