Exploring Vulnerability and Agency through Women’s Networks in Saudi Arabia 阿部尚史

Exploring Vulnerability and Agency through Women’s Networks in Saudi Arabia 阿部尚史

日時:
2015年1月20日(火)13:00-15:00
場所:
東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3
講演者:
辻上奈美江(本学総合文化研究科特任准教授)
コメンテイター:
ワファ・アル=トワイジリ(サウジアラビア・イマーム・ムハンマド大学准教授)
主催:
科学研究費基盤(B)「中東・北アフリカ地域のイスラーム圏の少数派と弱者に関する総合的研究」(研究代表者:高橋英海)
共催:
東京大学大学院博士課程教育リーディングプログラム「多文化共生・統合人間学プログラム(IHS)」教育プロジェクト5「多文化共生と想像力」「中東・アフリカ」ユニット

IHSプロジェクト5「多文化共生と想像力」「中東・アフリカ」ユニットは、科学研究費基盤(B)「中東・北アフリカ地域のイスラーム圏の少数派と弱者に関する総合的研究」との共催で、サウジアラビア・イマーム・ムハンマド大学のワファ・アル=トワイジリ准教授を御招きし、本学の辻上准教授が "Exploring Vulnerability and Agency through Women's Networks in Saudi Arabia"「サウジアラビアにおける女性のネットワークから探る脆弱性とエイジェンシー」と題する研究報告を行った。その報告をうけて、トワイジリ氏が詳細に見解を述べた。

辻上氏は、これまでのサウジ社会に関する研究動向を通観して、親族集団のネットワークが果たしている役割が十分検証されていないことを指摘し、この点に着目することでサウジ女性のもつ主体性や脆弱性を明らかにすることが本研究報告の目的である。具体的にはリヤド市における女性親族の週末会合を取り上げ、数家族の事例を分析し、その女性親族による会合が女性のネットワーク形成に役立っていることや女性の安心や安全保障に寄与していることを明らかにした。女性は互いに助け合い、仕事の斡旋、使用人の紹介、情報の共有、その他の問題の解決にもこの会合を利用しているのである。今後は、こうしたネットワークの恩恵に十分にあずかっていない女性を研究する必要があるとのことであった。

辻上氏の報告をうけて、トワイジリ氏はその研究上の意義に加えて、個人の経験からネットワークがどのように機能しているかを説明し、今後の研究の展望についても言及した。氏によれば、近年サウジアラビアは大学の門戸をサウジ人以外にも広く開き、また多くのサウジ人が海外の大学に学んでいることを指摘した上で、こうした親族間のネットワーク以外のネットワークも非常に重要であり、相互補完的な関係を有していると述べた。

質疑においては、サウジにおける都市生活が近年のものであることからこうしたネットワークが農村社会とどのように関係していたのかその起源について質問がなされ、また外国人の使用人の役割、他地域との比較などについても議論された。 

報告日:2015年1月22日