The Assyrian Genocide of 1914-18 (Seyfo): Letters from Assyrian Eyewitnesses 報告 阿部 尚史

The Assyrian Genocide of 1914-18 (Seyfo): Letters from Assyrian Eyewitnesses 報告 阿部 尚史

日時
2014年12月6日(土)16:30−18:00
場所
東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム2
講演者
Prof. Dr. Martin Tamcke(Faculty of Theology, the University of Göttingen)
主催
東京大学中東地域センター(UTCMES)
共催
東京大学院博士課程教育リーディングプログラム多文化共生・統合人間学プログラム(IHS)教育プロジェクト5「多文化共生と想像力」「中東・アフリカ」ユニット

来年2015年は、第一次世界大戦中に発生したアルメニア人虐殺から100周年である。本講演会はそうしたことも踏まえつつ、これまでアルメニア人虐殺の陰に隠れてあまり注目されていなかった、アッシリア人虐殺事件を取り上げるものであった。タムケ氏は元来、神学・哲学の専門家であるが、近年はドイツ宣教団の残した報告書などを用いて、20世紀初頭の中東のキリスト教徒を取り巻く状況などについても考察を進めているとのことである。

タムケ氏はまずアルメニア人虐殺が発生した事情を大戦の推移との関連で概観し、さらに、この事件に関するトルコ政府の公式見解が変化したことを指摘した。つまり、第一次世界大戦直後においては、トルコ政府はアルメニア人虐殺事件の存在を認めていたのにその後否認するにいたったのだという。このように虐殺事件は政治的理由で認められたり否定されたりしてきたのである。

講演の本題としては、主として現在のイラン領のオルミエ近郊の村々で活動していたドイツ宣教団の報告書をもとに、戦時下にアッシリア人が受けた被害について考察された。タムケ氏は、報告書に記されているいわばアッシリア人の生の声を伝えることで、被害の実情や被害者の心情を直接的に取り上げた。それによるとアッシリア人は軍人のみならず周辺農村のムスリムの暴漢によっても被害を受けていた。戦争のような非常事態になると少数派がいかなる状況に陥るのか比較考察する貴重な情報であった。

質疑においては、宗教指導者が虐殺事件にどのような役割を果たしたのか、宣教団の位置づけ、またアルメニア人虐殺とアッシリア人虐殺をあわせて虐殺をいかにどのように議論を構成すべきかなど議論された。

The Assyrian Genocide of 1914-18 (Seyfo): Letters from Assyrian Eyewitnesses 報告 阿部 尚史

報告日:2014年12月8日