「放送と通信の来し方と行く末」報告 林 香里

「放送と通信の来し方と行く末」報告 林 香里

日時
2014年6月23日(月) 18:00−20:00
場所
東京大学本郷キャンパスダイワユビキタス研究学術館3階ダイワハウス石橋信夫記念ホール
講演者
岡本剛和先生(東京大学大学院情報学環准教授)
主催
東京大学大学院博士課程教育リーディングプログラム多文化共生・統合人間学プログラム(IHS)「情報・メディア」ユニット
協賛
東京大学大学院情報学環林香里研究室「メディア研究のつどい」

本講演会は、急速に進行する、いわゆる「放送と通信の融合」について、2010年の放送法などの関連法改正に携わられた岡本氏に講演をお願いした。放送業務の監督庁である総務省の放送・通信行政の最新の動向や対応について知る貴重な機会となった。

岡本氏はまず、「放送」と「通信」のそれぞれの定義と規制根拠を確認した上で、それらが技術の変革とともに変容しつつある現状を具体的な事例とともに説明。2010年の法改正では、従来の放送と通信の関連諸法を、放送関連4法を統合することにより、コンテンツ、伝送サービス、伝送設備から成る「レイヤー型」法体系に改められたことを提示した。これに関連して、EUの法体系と日本とを比較しながら、異なる政策アプローチがあることにも言及があった。最後に、通信のネットワーク容量の大半を「P2P(Peer to Peer)」が占めていた時代が終わり、動画視聴が大幅に増加した趨勢に鑑み、放送と通信が市場で競合関係に置かれている現状について説明があった。

その後、参加者からの質疑を受けた。議論では、(1)他国と比べ、日本の放送コンテンツ・アーカイブの研究等の二次利用の遅れ、(2)依然として残る「通信なるもの」と「放送なるものの」意味、(3)事業者の目線を中心とした制度設計と受け手の目線を中心とした制度設計の違い、(4)通信と放送の競合関係の未来、(5)通信と放送の融合による番組内容への介入の問題、(6)郵政省から総務省への再編における制度設計及び行政手法の違いと、経済産業省と総務省の産業へのアプローチの違い、など様々な論点をめぐって議論が交わされた。

本講演会は、政府、産業、学界それぞれの立場から、通信と放送の未来を考えるための実践的な議論の場となった。

報告日:2014年6月30日