福島県いわき市出張 報告
渡邊雄一郎

福島県いわき市出張 報告
渡邊雄一郎

日時
2014年3月3日(月)−4日(火)
場所
福島県いわき市
主催
東京大学大学院博士課程教育リーディングプログラム多文化共生・統合人間学プログラム(IHS)「科学技術と共生社会」教育プロジェクト

福島第一原発事故からほぼ3年。いわき市は福島県のなかにあるが、放射性物質のFalloutは比較的少なかった地域である。現在の測定値は関東の地域とほぼ同じにもかかわらず、現地で生産された農産物、水揚げされた水産物については、放射線検査をしないと出荷できない状況にある。現場の対応、苦悩、本音を聞いた出張となった。ちなみに現地で簡易型線量計を携帯したが、東京0.04 uSv/hr に対していわき0.08 uSv/hrほどであり、この値は他の地域で石材建造物のなかにいるときと同等レベルである。 本出張での視察は、教養教育高度化機構チーム形成部門の岡田晃枝特任准教授、およびその引率による教養学部学部生5人と現地で合流した。

■3月3日(月)

●13:30 いわき市役所に向かい、いわき市「見せます!いわき情報局みえる課」(農政水産課)の係長 新妻敬氏と面会。

 いわき市の農作物、水産物の生産、流通についての取り組み全般を聞く。以後の視察現場についての、事前紹介。市の取り組みの内容、始めた経緯をきく。透明性をいかにつたえるかがポイントであるというコメントが印象に残る。

●15:30 JAいわき市第一営農センター 農作物検査室

 いわき市で生産された野菜類の安全確認モニター検査の現場を視察。「見せま す!いわき情報局みえる課」 主事の横田 竜一氏に案内、説明をうける。測定に供する野菜を、使い捨ての紙皿の上でカッターナイフで細切れにし、そして実際に測定器をもちいた測定の要領を聞く。測定もふくめて来年度以降IHSでの演習で同じ放射線測定が取り入れられるが、その測定が持つ意味を実感する。学生たちも非常に興味を示した。前処理と測定にかかる時間、統計学的な解釈と測定時間などについて議論をする材料となった。IHSの実習および議論対象の題材となろう。

●同日夜 いわき市宿泊

■3月4日(火)

●9:20 いわき市四倉町長友にある JAいわき市カントリーエレベータを視察。
 福島県産の米は、全袋検査をする必要があって、本施設と同等のものが全県にできた。実際の検査は、出荷時期が終了しているため、飼料用米の袋で模擬的に測定過程のデモをしていただき、説明を受ける。「見せます!いわき情報局みえる課」 主事の横田 竜一氏に案内、説明をうける。測定のための所要時間と、測定誤差、統計的な考え方についての理解が非常に重要となることを実感した。所要時間、処理する数との兼ね合いが再度現場の問題として浮き彫りになった。

●10:00 農業組合法人 大野水耕生産組合 大和田正幸氏の案内
 いわき市で震災前から農業法人として、大規模温室のなかで一部観光客に収穫体験させるスタイルをまぜながらトマト、イチゴの生産をしている現場に案内いただく。当日の温室の様子、福島第一原発の爆発の前後の様子などをきく。室内であり、放射性物質のfalloutはないにも関わらず、検査をせねばならない現状、苦労、苦悩を聞く。観光客がようやく戻ってきて、いわき市周辺状況を見ていただく経緯となっていることを横田 竜一氏からもうかがう。

●11:00-11:40 いわき市太平洋沿岸の、津波被災地の現状を車中から見学。
横田竜一氏の説明を受ける。がれきは撤去され、整地がすすんでいることを見、直後を思いはかる。

●12:50-14:00 いわき市小名浜漁港に向かい、小名浜機船底曳網漁業協同組合の取り組みを聞く(中村氏、石崎氏)
各漁船の水揚げごとに、魚kg単位でサンプルをつくり、放射線測定を行う体制を見学。新鮮さをうりものにするだけに、如何に限られた時間内に安心を確認できる測定ができるかに腐心をしていることを目の当たりにする。

●帰京

報告日:2014年3月